統計入門 数理サプリメント

講義全体の数理を掘り下げる副教材

神谷之康

公開

初版 2026年6月25日 / 更新 2026年7月6日

はじめに

本書は、京都大学1回生向けの講義「統計入門」(全13回)の数理サプリメントである。各回のスライドが概念と使い方を「直感 → 具体例 → 数式」の順で示すのに対し、本書はその数式の側に一歩踏み込み、公式がなぜそうなるのか、分布どうしがどうつながっているのかを、定義から順を追って確かめる。教科書 R.A. Poldrack『統計的思考』(神谷之康 訳、朝倉書店)を補完する位置づけである。文章化・構造化には生成AI(Claude)を活用したが、内容の企画・判断・最終的な責任は著者にある。

統計の公式は「覚えるもの」に見えやすい。しかし期待値・分散の性質も、正規・カイ二乗・t 分布のつながりも、ベイズの更新も、少数の定義と論理から導けるものである。本書のねらいは、各回で登場した結果を「与えられた事実」から「自分で再構成できる道具」に変えることにある。試験前の確認にも、講義中につまずいた箇所の橋渡しにも使えるよう、各章は独立して読めるが、前から読むほうがつながりは見えやすい。

数式の理解に必要な範囲は高校+αにとどめ、積分や行列が出る箇所は最小限の説明を添えた。難しければ結論(枠で囲った式や「要点」)だけ拾っても構わない。


本書の流れ

基礎(講義の中心となる内容)

  • 統計の重要ポイント — 講義全体を貫く概念の背骨。記述統計から推測統計までの考え方を一本の線で整理する。
  • 公式の導き方 — 期待値・分散の線形性、標準化、不偏分散の n-1 など、数理の「幹」をたどる。
  • 確率分布のまとめ — 主要な分布の意味とつながり。正規・カイ二乗・t の標本分布の一族、ベータ分布・コーシー分布までを1枚の地図にする。
  • ベイズ統計の数理 — 事前分布・尤度・事後分布・周辺尤度という4つの登場人物の役割分担を、コイン投げの通し例で追う。BIC とベイズファクターにも触れる。

発展的トピック ── 進んだ分析手法(一歩進んだ内容。まずは考え方の地図として)

  • 因果推論の初歩 — 観察データから因果効果を読むための共変量調整。因果グラフ(DAG)にもとづき、交絡は入れ、コライダーは外す、という変数選択を線形モデルの数式で確かめる。
  • 機械学習の初歩 — 「推論」と「予測」の違いから出発し、予測誤差のバイアス・バリアンス分解、過学習とクロスバリデーション、AIC・BIC(および WAIC・WBIC)の関係を整理する。

付録

  • Rコードの読み方 — コードを「指示の文」として読む。講義で使う base R の書き方を文法から押さえる。

数式は本文中にそのまま表示している。

ヒント通読用 PDF 版

本書全体を1つのファイルにまとめた通読用の PDF を用意している ― PDF 版をダウンロード(左サイドバー上部のダウンロードアイコンからも入手できる)。


著者・参照・ライセンス

神谷之康(かみたに・ゆきやす)── 京都大学大学院情報学研究科 教授/ATR フェロー。研究室ウェブサイト: Kamitani Lab

教科書として参照している R. A. Poldrack『統計的思考』(神谷之康 訳、朝倉書店)の原著 Statistical Thinking for the 21st Century は、ウェブブックとして無料公開されているstatsthinking21.org)。本書とあわせて参照してほしい。

本書は クリエイティブ・コモンズ 表示–非営利 4.0 国際(CC BY-NC 4.0) ライセンスで公開する(原著ウェブ版と同じライセンス)。出典を示せば、非営利の教育目的で自由に共有・改変してよい。